競艇のツケマイを徹底解説
~超絶技ツケマイの魅力に迫る~
競艇でよく耳にする「ツケマイ」とは一体何か?
競艇の魅力は迫力あるターンにあるといっても過言ではありません。
ツケマイは競艇のターンで使われるテクニックで、もっとも高難易度のターン技術のひとつです。
当記事ではツケマイの名前の由来、メカニズム、過去のレースでツケマイが決まった名勝負まで徹底して解説していきます。
競艇のターンについて
競艇の魅力は迫力のターンにあるといっても過言ではありません。
同一規格のモーターで競い合うため直線での抜きつ抜かれつが起りにくく、着順を決定づけるのはターンの良しあしです。
ここでは、そんな競艇のターンについて紹介してまいります。
ツケマイの「マイ」は回るの略
競艇では「回る」を「マイ」と呼びます。
ターンで回ることも「マイ」ですし、プロペラが回ることも「マイ」と呼びます。
選手コメントやレース解説時によく使われますので覚えておくとよいでしょう。
頻繁に使われる代表的な使い方は、
- 先マイ
他艇より先にターンマークを回ること - 外マイ
他艇の外側を回ること - マイ足
ターン時のボートの挙動を表し、マイ足が良い、悪いのように使われます - マイ過ぎ
プロペラの回転が上がり過ぎた際などに使われます
<使用例>
1号艇はスタートを決めて「先マイ」できれば勝てるでしょう。
3号艇は差しではなく「外マイ」を選択しそうです。
展示では2号艇と5号艇の「マイ足」が良くみえました。
試運転では「マイ過ぎ」てるので、再度ペラを叩いてみます。など‥‥‥
ツケマイ=付けて回るの略
付けるというのは、他艇の外側に自艇を近づけ、くっ付けて回る状態をいいます。
画像では4号艇が1号艇の外側にピッタリと寄せて(付けて)回っているのが分かると思います。
ツケマイは決まり手ではない
競艇では1着の艇の決まり手(=勝ち方)を6つに分類しています。
競艇での決まり手は、
- 逃げ
最内の選手がスタートで先手を取り、そのまま逃げ切ること(イン逃げともいう) - 差し
先にターンしている艇の内側を突き先行する勝ち方 - まくり
2~6コースの艇が外側を回り(主に全速で)内側の艇よりも先行する勝ち方 - まくり差し
3~6コースの艇が一部の艇をまくり、一部の艇を差して先行する勝ち方
主には3コースが2コースをまくり、1コースを差す展開など - 抜き
1周目1マークを回った時点では他に先行されているが、レースの道中で抜く勝ち方 - 恵まれ
1着艇がフライングなどの失格になることで繰り上げで1着を得ること
ツケマイは、この決まり手のうち「まくり」の1種となります。
以前は「ツケマイ」も勝ち方の決まり手とされていましたが、「まくり」との違いが分かりにくいことから2008年に決まり手は「まくり」に統一されることになりました。
まくりとツケマイの違い
「まくり」も他艇の外側を回る(外マイ)点では「ツケマイ」と似ていますが、「まくり」は全速ターンなどの速度差で内側の艇に差を付けて先行しますが、「ツケマイ」は他艇の速度を落とさせ、先行するターン技術になります。
- まくり
他艇(内側艇)よりも速い速度で外側から抜くこと - ツケマイ
他艇(内側艇)の速度を落とさせ、その外側を抜いていくこと
ターンの芸術ツケマイの魅力
ツケマイが決まると、まるでマジックを観ているかのように内側艇の動きが止められ、ツケマイを決めた艇がスルスルと前へ出ていく様は爽快の一言に尽きます。
当記事の後半では、さながら芸術的ともいえる「ツケマイ」の名レースをご紹介していきますので、お楽しみになさってください。
ツケマイのメカニズム
いったいどうして他艇の動きが止まるのか?
ここでは「ツケマイ」のメカニズムについてご説明していきます。
キャビテーション(キャビる)とは?
競艇を観ていると時々耳にされる「キャビる」とは、流体力学で用いられる現象のひとつで正確には「キャビテーション」といいます。
競艇で使われる際には、水流で発生する気泡によってプロペラが空転状態になり、推進力を失って減速することを意味します。
流体力学上での「キャビテーション」発生原理については専門的すぎるので、当記事では割愛させていただきます。
競艇では、モーターで発生した「曳波(ひきなみ)」によって「キャビテーション」が起ります。
曳波(ひきなみ)の影響
「曳波(ひきなみ)」も競艇ではよく耳にする言葉のひとつです。
ボートに取り付けられたモーターによって生じる「航跡」が「曳波(ひきなみ)」です。
競艇における「曳波(ひきなみ)」の影響は、
①水面が荒れる
自動車でいえば路面が荒れた凸凹道のイメージ
②推進力が失われる
先のキャビテーションが発生しやすい
この二点が大きく影響します。
曳波を超えるときに、艇がバタついて上手くターンができなかったり、推進力を失って減速してしまったりと、競艇ではこの「曳波(ひきなみ)」が厄介な存在となります。
ツケマイとは、この厄介な存在の曳波を相手に意図的に与えるターン戦術です。
ツケマイを画像で解説
3号艇が2号艇に対してツケマイを敢行しようとして、2号艇の外側に艇を寄せていきます。
3号艇が2号艇の外側に近づきます。
このとき角度が重要で、3号艇の舳先ができるだけ2号艇に対して平行、もしくは、少しだけ内側に向くように艇を付けていきます。この角度が少しでも外に開いていると、内側艇に押し出されて外側へ大きく膨らんでいくことになります。
この時点ではまだ、3号艇の曳波と、2号艇の曳波は重なっていません。
2号艇3号艇共にターンマークに向かってスロットルレバーを握っています。
3号艇の曳波が2号艇の曳波と重なっている点に注目!
3号艇のモーターが作る曳波で、2号艇はキャビっている状態となっています。
2号艇は3号艇の曳波を喰らい、
①艇が暴れる
②推進力を失う
状態になっており、一瞬で1艇身の差を付けられ後退していきます。
その直後には既に3艇身近い差が生まれ、2号艇はその他の後続艇にも着を奪われる可能性が出ています。
迫力のあるターンを体験!
選手の目線から「ツケマイ」を見てみましょう!
ツケマイ巧者たち!5人の上手い選手と名レースを紹介
先の画像で見ていただいた通り、ツケマイは瞬時に狙った相手の外側へ角度よく艇を寄せなければならず、「判断力」「乗艇能力」「動体視力」など、ボートレーサーとしての技術が問われるターンです。
ここでは、そんなターンの芸術ともいえる「ツケマイ」の名手たちを、ツケマイを決めた名レースと共にご紹介いたします。
實森美祐:SGの大舞台で魅せた逆転ツケマイ!
広島支部所属の實森美祐(さねもり みう)が魅せたツケマイの舞台は、宮島競艇場で開催されたSG「第49回ボートレースオールスター」の4日目。
1号艇で出走した第6R。
スタートで若干遅れた實森選手は5号艇にまくり差しを決められ、2マークでは5号艇の先マイ態勢になりますが、ここで實森選手はお手本のような綺麗なツケマイで逆転し、見事大舞台SGでの水神祭を獲得しました。
同じく4日目の後半11Rでも4号艇で出走した實森選手は、一気のまくりから見事な連勝ゴールをゲット!
前半レースではSGで5勝している超ベテラン「原田幸哉」選手を相手にツケマイを決め、後半レースでは全1600人中13人しかいないゴールデンレーサー「平本真之」選手を外マイで沈めるというお見事なレースでした。
瓜生正義:伝説の1億円ツケマイ!41億円以上の舟券返還事件
福岡支部所属のゴールデンレーサー「瓜生正義(うりゅう まさよし)」は、グランプリ制覇を2度含むSG通算11勝の超トップレーサーで、伝説の1億円ツケマイも2021年のグランプリ優勝戦で起こりました。
し烈な予選を勝ち抜き、4号艇での出場となった瓜生選手。1号艇にはここまでトップを死守してきた押しも押されぬトップレーサー峰竜太選手。
98%の競艇ファンが1号艇「峰竜太」選手の優勝を確信していたレースで、オッズも1号艇の1着以外ではほぼ万舟となるようなレースでした。
本番では3コースへ進入した瓜生選手。
トップ中のトップレーサー6人が1億円と賞金王の名誉を賭けたレースだけに、スタートスリットで大きな差はなく1マークを迎え、ここで瓜生選手は周りの状況を見て「ツケマイ」を敢行します。
通常、最内の1コースは緩やかにターンマークへ寄っていくところ、峰選手は少し奥まで直線的に走り、そこから鋭角に1マークへ艇を向ける特徴があります。
そこに「瓜生選手」のツケマイを喰らったため、鋭角に進み過ぎた峰選手はターンマークに激突、後続艇を多数巻き込んだ転覆となってしまい、レース(舟券)は3連単、3連複が不成立となり、41億円以上もの返還が生じる、競艇史上に名を残す結果となってしまいました。
レース終了後、峰選手に対する怒りや、峰選手自身も公式でお詫びのコメントを出されていましたが、これは瓜生選手のツケマイが素晴らしすぎた結果なので、仕方がないことでしょう。
秋山直之:元祖スピードキングの芸術的ツケマイ!
秋山直之(あきやま なおゆき)は、群馬支部所属83期のボートレーサー、本栖(現ボートレーサー養成所)チャンプ。
新人時代に大きな事故を経験したことから、内側で揉まれるのが嫌だからと、曳波のない大外をライバルよりも速い速度で回ればいいという考え方となり、艇界トップクラスの全速スピードターンが持ち味の選手となる。
SG優出2回、G1で5勝の実績を持っていますが、「秋山がスタートさえ人並みにイケればSGをいくつ勝っていてもおかしくない」と周りからいわれるほど、スタートが遅いのがネック。平均スタートは同クラスの選手が0.15前後なのに対して、秋山選手は0.20とかなり遅いスタートとなります。
本人曰く「余計なことを考えたくない(ターンにだけ集中したい)」と、スタートに神経を尖らせることはしたくない様子。
最終周回の最後のターンまで全速で手を抜かない走りに魅了されるファンは多く、競艇界のお笑い担当で人気者の「西山貴浩」選手は「秋山さんが後ろにいたら煽り運転もいいとこだ」と、ターンでしつこく攻めてくる様子を笑いを誘いながら説明しています。
秋山選手のツケマイは出走レースの多くで見られますので、これぞというレースをひとつに絞るのが難しかったのですが、少し古い2014年に印象的なレースがありましたのでそちらをご紹介します。
地元桐生競艇場で開催されたG1初日の1R。地元エースと言うこともあって秋山選手は1号艇からの出場となります。
しかし、やはりスタートでは遅れてしまい、2号艇に直まくりされる展開で、バックストレッチでは混戦に巻き込まれ、普通の選手であれば「着外かよくて3着か」な状況にも関わらず、2マークで華麗なるツケマイを披露し、1マークの仕返しとばかり1着を奪い返します。
艇界でいちばん魅せるツケマイをする選手は?と関係者に聞くと、多くの方が秋山選手の名前を挙げます。ツケマイの申し子として、競艇でツケマイを見てみたいならば秋山選手のレースを見てみることをおススメします。
菅章哉:競艇史上もっともアツく興奮するツケマイ!
菅章哉(すが ふみや)は、徳島支部所属105期のボートレーサーで、ファンからは「ガースー」の愛称で親しまれています。
現役最強のまくり屋として、チルト3度で挑むレーススタイルはファンを興奮の渦に巻き込んでいきます。
そんな菅選手と、競艇界のトップレーサー峰竜太選手が白熱の抜きつ抜かれつを魅せてくれた伝説のレースが、2021年鳴門で開催されたG1「大渦大賞開設68周年記念競走」2日目の6Rです。
6号艇の峰選手が前付けで2コースまで進入し、4号艇の菅選手は大外6コースとなる変則的な進入レース。
さすがのスタートと、1マークのさばきで峰選手が2コースから直まくりを決めていくところ、さらに大外からチルト3度で伸びてきた菅選手が一気に2段まくりとなるツケマイで峰選手を曳波に沈めます。
しかし、そこはトップレーサーの峰選手、しかも菅選手はターンが難しくなるチルト3度。2マークでは峰選手の見事な差しでホームストレッチに戻った時は内側に峰選手が入り逆転状態。
2周目の1マーク手前でファンの多くはこのまま峰選手の1着、2着に菅選手で決着すると思った矢先、1マーク手前で再度ツケマイの態勢をとる菅選手は、一旦外側へ艇を向け、峰選手の外側を狙い撃ち、超絶な技でツケマイを決めます。
1度のレースで2度のツケマイ。しかも相手は格上トップレーサーで自身はターンの難しいチルト3度。
もうこれ以上はないほどに大興奮のレースで、舟券がハズレても悔いが残らない史上最もアツいレースだったといえます。
その他のツケマイ巧者
■峰竜太
ツケマイの名レースでは沈められる選手として2度も登場した峰選手ですが、艇界ダントツの乗艇技術とコース取りの上手さから、ツケマイの名手としても名が挙がります。
そんな峰選手を沈められるツケマイの凄さがご理解いただけたかと思います。
■桐生順平
競艇界の頂点グランプリ制覇を含むSG2勝、G1を15勝するトップレーサー桐生順平選手もツケマイ巧者としてよく知られています。
■毒島誠
SGはグランプリ含め8勝、G1では14勝となるトップレーサー。デビュー当初からスピードとキレのあるターンに定評があり、ツケマイの巧者としても名を馳せています。
また、ナイターレースの勝率が高いことからナイターキングの異名を持っています。
その他にもツケマイ巧者として有名なのは、
- 興津藍
- 大山千広
- 高田ひかる
- 阿波勝哉
などの選手が挙げられます。
ツケマイはまくりの1種となるので、まくり屋(アウト屋)の選手がツケマイを得意とすることもあります。アウト屋に関しては別記事でまとめていますので是非そちらもご覧ください。
競艇ツケマイまとめ
ここまでツケマイについてご説明してきましたが、いかがだったでしょうか。
- ツケマイはターンで相手を抜き去る技術
- 相手艇の推進力を奪うターン
- 曳波を狙った位置に発生させるには角度やポジションが大切
- ツケマイが決まると観ているファンは興奮する
ツケマイは、ピンポイントの位置に自艇を動かし、狙った相手の推進力を奪う競艇界の中でもいちばん難易度の高い超絶技巧になります。
一歩間違うと大事故にもつながるため、ツケマイを敢行するには冷静な判断力も求められます。
また観ているファンにとっても、ツケマイは爽快な気分を味あわせてくれるとっておきの秘儀のような感じで、盛り上がること間違いなしです。
是非一度本場のレース場でツケマイを体験してみてください。
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日程 | 2024年11月20日 |
レース名 | 福岡6R⇒常滑8R |
舟券 | 3連単コロガシ |
的中プラン | プラチナプラン |
的中金額 | 564,000円 |
11/20までの総的中率 | 90.6% |